Salut 「急に具合が悪くなる」を読みました。
哲学者 宮野真生子さんと、人類学者 磯野真穂さんの二か月間で10便の往復書簡をまとめた本です。
冒頭から、きっとこの書簡は今までの価値観を変えてくれると確信した。
はじめに、2018年11月、磯野さんは宮野さんから”急に具合が悪くなる”かもしれないから、イベントを取りやめてほしい。」というメールをもらいます。
8年前から乳がんを患っていると淡々と話す宮野さんに、自身のもっている乳がんの情報から、医学の進化で治るのでは? という思いが頭にあった。”急に具合が悪くなる”とは、一体どういう状態なのかと疑問を持ちます。
医師が持っているデータから、急に具合が悪くなる確率が高くなっていると告げられたこと、その悩ましい確率によって行動が変化させられ、未来の可能性を封じてしまうことに疑問を持つ。
また、誰にだって当日、何がおこるかわからないのだ。
「きっと、大丈夫」という妙な確信のもと、宮野さんに返信。
宮野さんもそれを引き受け、当日イベントは、なにもおこらず好評で無事閉幕。
次回の開催へつながる。
「具合が悪くなってキャンセルしたら、ほかの人に迷惑をかけてしまう。
あらかじめキャンセルしておこう」なんて考えるのは、よくあることだと思う。
自身の体調が悪いのに、他人への迷惑を先に考えて行動を控えてしまう。
自身の体調を最優先にして、参加できなくなっても、ほかの人がうまく回してくれれば良い。 そんな考えもありだろう。
急に具合が悪くなるかもしれないからと医師に言いわれたのは、
「ホスピス」を探しておいて欲しいとのことだった。
宮野さんからの返信には、
「”いつ死んでも悔いが無いように”という言葉に欺瞞を感じるのは、
死という行き先が確実だからといって、
その未来だけから今を照らすようなやり方は、
そのつどに変化する可能性を見落とし、
未来をまるっと見る事の大切さを忘れてしまうからではないか。」
私自身も持病をこじらせていた時に感じたモヤモヤを、言語化していて、
・病気を検索しまくり、情報を集めることで自分を守っている。
・医師と患者の間に入ってくる、第三者の民間療法の勧め。
・ケアする側から、患者とどう接していいのか。・・・ 等々
そうそう、それなんだよ!と、
気が付くと本にたくさん付箋を貼りまくっていた。
本当に具合が悪くなっていき、逃げずに受け止め、投げ返す磯野さんは素晴らしすぎる。私だったら逃げ出しているに違いない。
「まだ書ける?」と磯野さんからの問いかけに、
「なめんなよ、磯野真穂」の一言で切り捨てる力強い返信。
書簡の途中で出版がきまり、自ら校正も行っている。
重いテーマだけど、病気だけが人生の全てではない。
本を手に取った時、かわいらしい表紙が意味するものが分からなかった。
読み終えて、二人の距離感、言葉の力強さが伝わって、とても愛おしい。
ああ納得の表紙だなと思った。
\「急に具合が悪くなる」はこちらから/
\磯野真穂さんの「ダイエット幻想」について書きました。/
Au revoir